ミュータント(夢から創ったショートSF)


2003年5月2日の夢を元に少し創作してます。
お題は「ミュータント」
主演はもちろんDourif様です。いつもなんですけどね~。

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設定(無理やりですが)
細菌戦争の頻発により、人類は絶滅に瀕していた。
しかしその中で、わずかだが、自然な抗体をもつ者たちが生まれていた。
男もその一人だった。
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「奴らは、自由に姿を変えられる・・・・。
俺達の身近な人間に化けて入り込んでくるんだ。」
男は、怯えた様子の人々を前に、つぶやくように語りはじめた。
部屋はコンクリートの壁に囲まれた倉庫のように見える。
まるで廃品のような家具や、金属のかけらが散らばっている。

よく見ると、そこには人間ではない何者かが混ざっていた。
彼らは子供のように小さく、金属製の棚の一番下に3人、いや3匹か・・・。
その濃い緑色の肌の色や質感を時々変化させながら、寄り添っていた。
側にいた女が優しくその一匹の頭を撫でる。
うつむき気味にゆっくりと歩いて来た男は、棚に手をかける。
3匹はつぶらな大きな瞳で男を見上げた。
むせ返るような甘い香りがする。
「あの時」
男は立ち止まり、苦しい表情を浮かべた。
「妻が、殺された、あの時」
穏やかだった男の瞳には押さえきれない怒りが浮かぶ。
「同じ匂いがした」
その瞬間、棚から飛び出した3匹は、かわいい子犬に似た形に姿を変えていた。
哀願するような瞳を男に向けている。

その時、外で物音がした。
男は、一瞬哀れむような瞳でその子犬に似たものを見つめたが、
音に反応するように、叫んだ。
「こいつらを外に出すんだ!」
「奴らが来る」
「急げ、追い出すんだ!」
女は3匹を可愛く思っていたので、一瞬迷いを見せる。
それでも、1匹を抱き上げ、扉に向かいながら、男に訴える。
「でも・・・追い出せば、奴らに殺されるわ」
男は残りの2匹を追いながら、
「こいつらは・・。奴らの仲間なんだ。・・・ここにいてもどうせつぶされちまうだけさ」
「さあ、出るんだ、出て行け!」
男は厚い金属の扉の外に3匹を放り出す。3匹は空中で再び姿を変えた。
「扉をふさぐんだ。急げ!」
そこにいた全員が、年老いた女性までが、バリケードを作るのを手伝った。

しかし、扉をふさぐ前に奴らは来た。
「○○○出ておいで、パパだよ」
建物の外で、彼らをを呼ぶ身内の声がする。
その声は大勢だった。母であり、父であり、恋人や妻だった。
「生きてたんだ!」
我先に外へ飛び出そうとする人たち。
「行くなー!!」
男は叫びながら、止めようとしたが、押さえ切れなかった。
男は立ちすくみ、一瞬悲しげな表情を浮かべる。
振り返ると、小さな子供が二人、そして年老いた女性と怪我をした青年、そして一人の女が、彼を見つめていた。
叫び声が響く。
男は顔を曇らせ悔しさを振り払うように、扉を閉める。
「なぜ、信じない・・・」
男はつぶやいた。

静かだった。
男は怪我をした青年の傍に座る。
「痛みはどうだ?」
無理に笑いながら青年が答える。
「僕は大丈夫。だから、行ってください。」
女が彼の額の汗を拭いながら、
「連れて行くわ。あなたを置いていけない」
「姉さん、僕がいたら逃げられない、彼と行って」
男が青年の肩をつかみ微笑む。
「君も一緒だ」

その時が近づいていた。
奴らも、そこを襲ってくるだろう。
さらに仲間を増やすために、その扉が開く時を待っているはずだ。

男は夢を見ていた。
愛する妻がいる。自分を見て笑いかけている。
甘い香りが漂う。
今まで笑顔をみせ寄り添っていた腕の中の妻が、突然恐ろしい怪物に変わる。
男は枕もとから銃を出し襲い掛かる怪物を撃った。
赤い血が飛び散る。
男は腕に妻を、妻の死体を抱いていた。

「始まりは何時だっただろう?
俺は何度妻を殺したのか、」
叫び声を上げ、男は目を覚ました。
弟の傍に付いていた女が駆け寄ってくる。

目覚めても、男の悪夢は消える事はない。
「自然な抗体を持つミュータントには、奴らは寄生することができない。
しかし、奴らは新しい仲間を見つけ出した。
あの濃い緑色の生き物だ。
あいつらは、可愛いペットに化ける。
そして子供たちに近づくんだ。
それだけなら、害はなかった。
だが奴らは気付いた、こいつらを介して抗体を持つ俺たちの体を乗っ取ることができる。
あの生き物は、精神エネルギーを喰って生きているようなものさ。
だから人間が哀れむような姿に自分達を見せることができる。完全ではないがね。」

「妻は俺と同じミュータントだった。
俺は・・・・彼女を守れなかった。」

「人類を滅亡させる細菌に対して、チャンク社は抗体の研究を行っていた。
俺は科学者の一人としてこのプロジェクトに参加した。
ある宇宙生物を寄生させる事により、細菌への抗体が生まれる事が分かった。
しかし本当に生まれたのは、抗体ではなく、全く別の生命体だった。

奴らは、一見その人物のように見える。記憶も持っている。
しかし、その魂を支配するのは邪悪な宇宙生物の方だった。
俺はその事に気付かなかった、皆だまされていた。」
自分達の滑稽さが可笑しくてたまらないと言う表情で男は言う。
「権力者たちは、こぞってこの生物に飛びついたよ」

「俺たちミュータントは、他の人間達にねたまれていた。
それも当然だな。
俺の友人たちが次々に倒れていったよ。
体中から血を吹き出して、それはひどいもんさ・・・。
妹も、母親も、皆死んだ。
俺は何ともなかった。不思議だったよ。
そのうちミュータントの存在に気付いた世間が騒ぎ始めた。
捕まったら実験台だ、俺たちは身を隠すしかなかった。
だが俺は、人間を救う手伝いがしたかった。
だから、ミュータントである事を隠してプロジェクトに参加したんだ」
話ながら男の瞳には泪が浮かんだ。

扉が開く時が迫っていた。
男は怪我をした青年を、何もない金属の壁の前に座らせた。
二人の子供と年老いた女性、そして女も金属の壁を見つめる。。
男は悲しげな表情で銃を握った。
「ミュータントの体を得た奴らは・・・不死身だ。
その同じ姿で何度でも復活する。」
男が銃を握り締め自分に言い聞かせるようにつぶやいた瞬間
金属の壁が目もくらむような光を発し始めた。
同時に、バリケードが崩れ金属の扉が吹き飛ぶ。
「飛び込むんだ」
男は青年を光の中へ押し込みながら叫んだ。

扉からは怪物たちが群れになって光に向かってきた。
その群れに守られるように、二人の人間の姿がある。
「ブラッド、会いたかったわ」
「パパ・・・」
優しい声が響く。
男の頬をつたう泪。
男は悪夢を振り払うように、引き金を引いた。


旧SPACEMAN'S BLOGより移動した記事です。
オリジナル投稿日: 2005/11/27 日曜日


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